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名古屋地方裁判所 昭和56年(ワ)3812号 判決

原告

高橋秀行

原告

高橋えつ

右両名訴訟代理人

西村諒一

被告

名古屋市

右代表者名古屋市水道事業管理者

水道局長

渡辺利幸

右訴訟代理人

鈴木匡

大場民男

鈴木和明

山本一道

鈴木順二

伊藤好之

鈴木雅雄

主文

被告は原告両名に対しそれぞれ金二六一万四七〇六円及びこれに対する昭和五七年一月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その一を被告の、その余を原告らの各負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  原告らの請求の趣旨

被告は原告両名に対しそれぞれ金二三二〇万二三〇四円及びこれに対する昭和五五年八月一五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

仮執行の宣言。

二  被告の答弁

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告両名は訴外亡高橋俊之(以下「亡俊之」という)の父母であり、亡俊之の共同相続人である。

2  亡俊之は昭和二八年八月一一日出生し、昭和五一年三月名古屋大学工学部土木学科を卒業して同年四月矢作建設工業株式会社に就職したが、同年一二月右矢作建設を退職して名古屋市技術職員、水道局技師として被告に採用され、昭和五四年一一月配水部西配水事務所勤務となつた。

3  本件事故の発生

(一) 日時 昭和五五年八月一四日午後二時五五分頃

(二) 場所 名古屋市北区城東町七丁目一五三番地先路上マンホール内

(三) 事故に至る経緯と態様

(1) 昭和五五年八月上旬頃、名古屋市水道局から西配水事務所に対し上下水道配管幹線のマンホール及びバルブ等の点検の指令があり、同事務所では配下の職員に対し管内に保有する全てのマンホールにつき、その位置、内外部の異状の有無、バルブの状況等の機能点検調査作業を行なうよう指示した。

そこで、右事務所ではそれぞれ三名位の職員を一班として、各班がそれぞれマンホールの点検作業に入つた。

(2) 亡俊之の所属する班は労働安全衛生法に基づき酸素欠乏危険作業主任者である訴外所憲治技師(以下「所技師」という)及び訴外亡吉野立身業務技師(以下「亡吉野業務技師」という)の三人で編成された。

(3) 本件事故発生日、右俊之の所属した班は他の箇所のマンホールの点検作業を終えたのち、続いて本件事故発生場所の当該マンホール(以下「本件マンホール」という)の点検作業に入つた。そして最初に、亡吉野業務技師が単身本件マンホール内に入り水道管バルブ装置上部のゲージ(バルブの開閉度を示す目盛り)等の点検整備作業を始めた。ところが、作業を始めるや分足らずの短時間のうちに突然、亡吉野業務技師は意識を失つてマンホールの底に滞留していた汚水の中に転落した。

(4) これを目撃した亡俊之は所技師と共に直ちに右吉野業務技師を救出すべく両名がマンホール内に入つたところ、数十秒経つかたたないうちに亡俊之も意識を失つて倒れ、所技師だけが自力でかろうじてマンホール外へ脱出したもののその場で意識を失つて倒れた。

(5) 本件マンホール内には底に汚水がたまり有毒ガスの発生をみ、既に久しくマンホール内は酸欠状態に放置されたままであつたため、亡俊之らは短時間(約三〇秒)のうちに酸素欠乏(以下「酸欠」と略称する)症状をおこして意識を失つたものである。

(6) 亡俊之及び亡吉野業務技師は同日午後四時頃、いずれも酸欠のため死亡した。

4  被告の責任

(一) 危険を伴う業務については、危険防止のため、事業者に対し、法令上種々の措置を講ずべき旨の定めがなされているが、本件マンホールの如き通風が不十分で酸欠の空気を吸入するおそれのある酸欠危険場所における作業については、労働安全衛生法に基づいて酸素欠乏防止規則が制定されており、事業者はこれに従わないで生じた事故について、当然責任を負わなければならないものである。

ところで酸欠防止規則には、事業者は労働安全衛生法施行令六条二一号に掲げる作業については、酸欠危険作業主任者を選任しなければならず、同作業主任者は作業に従事する労働者が酸欠の空気を吸入しないよう作業の方法を決定し、労働者を指揮する旨規定(同規則一一条)しているほか、事業者のすべき特別の教育の必要(同一二条)、異常のあつた場合の作業主任者への通報の必要(同一三条)等諸種の規定が設けられている。

(二) しかるに、被告の職員で、酸欠危険作業主任者として酸欠危険場所における作業の指揮をとる立場にあつた所技師は、右のような危険防止のための措置を何ら講ずることなく、亡俊之、亡吉野業務技師らをして前記マンホールの点検作業を実施させた過失及び被告自身、事業者として日頃からその職員に対し右規則を守るよう指導教育すべき義務があつたのにこれを怠つた過失により、本件事故を発生させたものである。

(三) また被告は市内数百ヶ所以上に、酸欠危険場所としてのマンホールを設置し管理しているものである。しかるに被告は永年の間マンホールの点検等を怠り、本件マンホールを酸欠状態のまま放置していたものであつて、その設置又は管理につき瑕疵があつた。

(四) 仮に被告に右過失もしくはマンホールの設置管理の瑕疵の責任が認められないとしても、被告は使用者として自己の職員である亡俊之をして、本件の如き危険を伴う作業に従事させるにあたつては、酸欠による事故に遭遇することのないように酸欠防止規則等に定められた基礎的な措置をとることはもとより、本件の如き事故の発生しないよう万全の措置を講ずべき雇用契約上の安全配慮義務があるのに、被告は右義務を怠つたため本件事故が発生したものである。〈以下、省略〉

理由

一請求原因12、同3の(一)(二)、同(三)の(2)中訴外所技師が被告水道局の技師であつて、労働安全衛生法に基づく酸欠危険作業主任者の資格を得ていること、同(三)の(3)中本件事故発生日に右所技師ら三名の者が本件マンホールへ赴いたこと、最初に亡吉野業務技師が右マンホールの中へ入つたこと、同人が右マンホールの底部の水中に落ちていたこと、同(三)の(4)中所技師が助かつたこと、同(三)の(6)はいずれも当事者間に争いがない。

二本件事故に至る経緯と態様

1  原告らは、本件事故は、亡俊之が、所技師の下で被告水道局西配水事務所から管内上水道幹線マンホール及びバルブの状況等の点検調査の指令を受け、これに基づき本件マンホールの点検等の作業に従事中発生したものである旨主張し、〈証拠〉中にはこれに副う記載もあるが、以下の証拠に対比して措信し難く、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。

2  却つて、〈証拠〉を総合すれば次の事実が認められこの認定を左右するに足りる証拠はない。

所技師、亡吉野業務技師、亡俊之の三名はいずれも被告水道局西配水事務所漏水防止係栓弁班に所属する一般の職員であつて、職務上の上下関係にないものであるが、本件事故当日午後一時頃、断水通知の配布、道路占用許可申請及び夜間断水工事現場の下見などの業務のため、西配水事務所備え付けの栓弁班用普通車(ライトバン)に同乗して外出し、同日午後三時頃、右業務を終えた。しかし終業時刻まで間があつたことから、右三名の者は、予め西配水事務所漏水防止係長から指示されていた上水道幹線バルブのチェックリストの素案の作成に資するべく、右チェック項目に欠落がないかどうか現地のマンホール(仕切弁室)に当つてみることになり、本件事故現場近くのマンホールに臨んでチェック項目の確認をした。ところが右マンホールが旧式のものであつたため、不断水式、最新式工法により施行された本件マンホールを見ることになり、本件事故現場に赴き、本件マンホールの上蓋を取り外し、中をのぞき見た。ところで右チェック項目の確認のためにはそれで十分であつたのであるが、亡吉野業務技師は本件マンホールは、自己が工事係当時、監督施行されたものであることや、先輩として亡俊之に対し最新式の仕切弁室の構造などを詳細に説明してやろうとの気持から、内蓋を取り外し、仕切弁室の中へ降りて説明を始め、更に亡俊之に仕切弁室へ降りて来るよう誘つた。その間地上に止まつていた所技師は交通渋滞に気付き、本件マンホールから離れ、交通整理に当つて間もなく、亡俊之の「吉野さんが」という叫び声を聞き、本件マンホールに駆け寄り、中をのぞくと亡吉野業務技師が底部に溜つた水の中に落ちているのを認め、救助しようとして中へ入つたが自分も意識を失いかけ、ようやく地上まで這い上り、かろうじて助かることができた。しかし亡俊之、亡吉野業務技師の両名は前記のとおり死亡するに至つた。

ところで、亡俊之がどのようにして本件マンホール底部の水中に落下したのかについては、これを直接確知すべき証拠はないけれども、前記亡吉野業務技師の言動と、亡俊之の叫び声からすると、亡俊之は、右吉野がバルブの構造などについて説明を加えようとして、更に下方へ降りる途中酸欠に陥り本件マンホール底部の水中へ落下したのを認め、これを救助しようとして、同マンホール底部へ降りて行こうとして酸欠に陥つたものと推認される。

三被告の責任

1  本件マンホールの如き酸欠危険場所における作業については請求原因4の(一)記載のとおり労働安全衛生法及び関連法令上の諸規定が設けられ、事業者に対し諸種の責任を課していることは当事者間に争いがない。

2 しかしながら、所技師が酸欠危険作業主任者として亡俊之らの作業指揮をとり、本件の如き危険発生を防止すべき責任があつた旨の原告らの主張の認め難いことは前記二の2において認定した事実、すなわち、本件事故が原告ら主張の如き本来の業務中に発生したものでないこと、所技師と亡俊之との間に職務上の上下関係はなかつたことなどに照らして明らかである。

3  また、原告らは本件マンホールの設置、管理に瑕疵があつた旨主張するけれども、〈証拠〉によれば、本件マンホールは被告水道局内に多数ある上水道用マンホールの一つであつて、それ自体危険な構築物ではなく、酸欠状態にあるものも極めて少数であるうえ、一般人がその中に入つたり、操作したりすることは考えられないものであること、水道局の職員といえどもその中に入る必要のある場合は、酸欠防止のための装具等を備えた雑工事班がこれに当たるとされていたことが認められ、これらの事実に照らすと、本件マンホールが通常有すべき安全性を欠いていたとは認め難く、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

4  そこで安全配慮義務違反の主張について検討する。

〈証拠〉に前認定の本件事故に至る経緯と態様を総合すると次のとおり認められる。

本件事故は亡俊之ら三名の経常業務を終えた後に発生したものであるといつても、右業務を終えた直後に勤務時間中に生じたものであるうえ、本件事故現場に赴いたのは右三名の上司である漏水防止係長の指示に基づく幹線バルブのチェックリストの素案作成の資料を得るためのものであつた。

ところで、右素案の作成は、被告水道局西配水事務所漏水防止係長の個人的発想によるものではあるが、漏水事故等緊急事態に対する予防対策の一環として、少なくとも地域住民に対する行政サービスとしてなされたものであるからこれを違法、不当な指示と解することは到底できないものである。従つて、右素案の作成は亡俊之ら三名にとつては業務に属するというべく、またそのための資料を得るため本件マンホールの上蓋を開けて中を確認した行為も業務中の行為ということができる。

しかし、それから先に亡吉野業務技師が本件マンホールの構造等について亡俊之に説明しようとして本件マンホールの内蓋を取り外して仕切弁室の中に降り、亡俊之を中へ降りてくるように誘つた行為は業務そのものとはいえないけれども、このような機会に水道局の職員として経験が浅い亡俊之を今後種々の職務を担当する可能性のあることを考えて年令、経験等において先輩である亡吉野業務技師が新式の仕切弁室の構造等について説明をし、亡俊之もこれに応じて知識、見聞を広めようとしたとしても軽率の譏りは免れないにしても、あながち非難すべき行為とも言い切れない。従つて、右吉野業務技師らの行為は業務に極めて密接した行為ということができる。

しかも、このような折に、先輩である亡吉野業務技師が予期しない酸欠のため、突然、マンホール底部の水中に落下するという緊急事態に直面した亡俊之が無我夢中で、これを救助しようとして同マンホールの底部へ降りて行つたのは後輩職員として、また人間として自然な行動であつて、これまた業務に極めて密接な行為であつて、広い意味で業務中の行為と評価することができる。

しかして、いずれも被告の履行補助者である被告水道局西配水事務所々長は監督者として、同漏水防止係長は直接の上司として、通常マンホールの中に立入ることのない栓弁班の職員であつても、その業務遂行に関連して、少数とはいえ酸欠の危険性のあるマンホールの中に立入る可能性があり、しかもその際、右のような緊急事態の発生することも予測されるのであるから、日頃から所属職員に対し、マンホール内の酸欠の危険性を周知徹底させ、酸欠防止のための装備等なくしてマンホール内に立入ることを固く禁止し、場合によつては緊急事態の発生に対処するため、生命綱、防毒マスク等を栓弁班の車両にも備えておくなどして、右職員らの身体、生命に対する安全を配慮すべき義務があるというべきである。

しかるに被告水道局西配水事務所々長及び漏水防止係長らはこれまで上水道用マンホールに酸欠事故の発生したことがなかつたことから、そのような緊急事態の発生することに思いを至すことなく、その結果、亡俊之に対する右のような安全配慮義務を尽さなかつたため、本件事故が発生するに至つた。

もつとも〈証拠〉によれば被告水道局においては、その職員に対し酸欠事故防止のための講習を実施し、亡俊之も一度これを受講していることが認められるけれども、先輩でしかも酸欠危険作業主任者の資格を有する所技師においてさえ、亡吉野業務技師らが本件マンホールの中へ入るのを一応止めはしたものの、それも酸欠の危険性を慮つて制止したわけのものではなく、自らも酸欠死の危機に直面するが如き行動に出ているといつた状況の下で、実務経験の浅い亡俊之に対し、酸欠の危険性を予測しての万全の行動を期待することは酷というべきであるから、右講習の実施によつて、右配水事務所々長及び漏水防止係長らが安全配慮の義務を尽したものとは到底認め難く、ひいては被告の責任を免れさせることはできない。

四損害

〈証拠〉を総合すれば亡俊之の損害として次のとおり認めるのが相当である。

1  給与相当分

被告水道局において、その職員につき原告ら主張のとおりの昇格及び昇級に関する規定の定められていることは原告ら主張のとおりであるけれども、そのことから直ちに亡俊之が死亡時から満六〇歳で定年に達するまでの三二年間の長期間にわたつて、右規定のとおり昇格及び昇級することを予測することは困難といわざるを得ないし、これを確実に予測させるに足りる証拠もない。

そうすると亡俊之の逸失利益の算定に当つては、できるだけ控目な計算をすることとし、被告が亡俊之の退職金等の支払に当つて、同人を企業職(一)の五等級六号給に格付けていることを参酌し、同人の年収を右等級、号給に固定(二九五万八六四九円)して計算することとする。

生活費として収入の二分の一を控除し、年別ホフマン式により中間利息を控除して計算すると次のとおりとなる。

2,958,649(円)×18.806×(1−0.5)=27,820,176(円)

2  退職金相当分

ところで、亡俊之が満六〇歳で定年退職するとすれば、同人が退職年金を現実に受給し得るのは三三年先となるところ現在、国あるいは地方公共団体において、将来の高齢化社会に備えて公的年金制度について多面的に検討され、制度自体の変更の可能性のあることは当裁判所に顕著である。しかも右年金には共済掛金の対価的意味合もある一方、亡俊之は被告水道局職員となつてわずか三年余にすぎず、退職年金受給資格取得のためにはなお一六年余の勤務と右掛金等の支払を要するものであることを考慮すると、このような不確実性の高い退職年金をそのまま逸失利益と認めることはできない。

しかしながら、亡俊之が満六〇歳で定年退職後も、七〇歳までは十分稼働が可能で、しかも同人の経歴、資質などからすると前項記載の年収の三割減程度の収入を上げることは可能と思われる。そこでこれを前項同様、生活費、中間利息を控除して計算すると次のとおりとなる。

2,958,649(円)×0.7×(22,293−18.086)×(1−0.5)=4,356,462(円)

3  退職金相当分

俸給月額を前記のとおり一六万二一〇〇円とし、退職金条例によりその二五分の一を日額とし、原告が三六年以上勤務した者としての係数一三四九を乗じた額からホフマン式により三二年間の中間利息を控除し計算すると次のとおりとなる。

4  慰藉料 金一二〇〇万円

亡俊之の経歴、年令、本件事故に至る経緯と態様及び本件事故により原告らの受けた精神的打撃の甚大なこと、しかるにこれについて、固有の慰藉料の請求をしていないこと並びに後記のとおり遺族特別援護金、同支給金が損害に填補されることについて原告らは敢て争つていないこと、その他本件に顕われた一切の事情を斟酌して右のとおり定める。

五過失相殺

前記本件事故に至る経緯と態様及び被告の責任の項において認定したところから明らかなとおり、本件事故が亡俊之らの本来の業務遂行中発生したものでないこと、亡俊之において、亡吉野業務技師を救助しようとして本件マンホールの底部へ降りた行為そのものに非難されるべき点はないにしても、同人が酸欠防止のための講習を受けて、その危険性についての一応の知識を有していたこと並びに同人の経歴に照らすと、亡吉野業務技師が最初に本件マンホールの中へ入ろうとして、所技師から止めようとの発言のなされた際、亡俊之において右発言に同調していたら、本件の如き重大な結果を招来することはなかつたのではないかと思われることなどを総合すると本件事故の発生に対し、亡俊之にも過失があるというべく、本件事故による損害の算定に当つてはこれを斟酌し、右損害額の二割を減ずるのが相当である。

六損害の填補等

被告主張7記載のとおり金員が原告らに支払われたことは当事者間に争いがない。

そこで原則としてこれら金員を右損害額から控除することになるが、特別弔慰金、災厄弔慰金については、その金額も大きくなく支払の目的が亡俊之及び遺族に対する特別の弔慰の見地から支払われたものと認められること及び原告らが本訴において固有の慰藉料を請求していないことなどに鑑み、これを右損害額から控除しないのが相当である。もつとも、遺族特別支給金、遺族特別援護金については、その名目の点はともかく、金額が多額であること、原告らは亡俊之の慰藉料を含め一切の損害を相続したものとして、本訴請求に及んでいること、原告らは亡俊之によつて扶養されていたわけではなく現実に扶養を受けなければならない状態にあるものでもないことに照らし、公平の見地からこれを右損害額から控除するのが相当である。

七計算

(27,820,176+4,345,462+3,358,815+12,000,000)(円)×0.8−(7,202,000+875,530+2,000,000+1,000,000+338,156+1,383,264+20,000,000)(円)=5,229,412(円)

5,229,412(円)÷2=2,614,706(円)

八以上の次第で原告らの本訴請求は各原告らそれぞれに対し金二六一万四七〇六円及びこれに対する本訴状が被告に送達されたことが記録上明らかな昭和五七年一月九日の翌日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(川端浩 福田皓一 佐藤明)

別表(一)、(二)、(三)〈省略〉

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